ダイニングテーブルを製作しているとき、ふと思い出すことがあります。
それは昔勤めていた会社で、お客様に言われた一言です。
"一瞬でも、このダイニングテーブルを囲んで、家族団欒をしている姿を想像しました。"
住宅の相談を受けながら、テーブルの説明をしているとき、現品販売されているテーブルがあり、家を建てたらこのテーブルを使いたいです!と言われて、その場で予約お取り置きをしました。
すると、しばらくして"今買いたいというお客様がいるから!"と他の担当者から連絡が来て、その担当者が社長に相談したところ、"現金でいますぐなんだから、その人を優先しなさい。"とのことで、なんとその予約してあったテーブルを販売してしまったのです。
目先の利益を優先にして、お客様との約束を破られた僕は途方に暮れてお客様にご連絡。
言い訳なんてできるわけもなく、自分の責任です。とお伝えして、そして言われた言葉が、その一言です。
そんな目先の利益ばかり優先するやり方にどうしても納得が行かず、どんどん不信感を抱くようになった僕は"こんなことばかりしていると、5年後に潰れますよ!"と言い放ってその会社を退社。
その5年後、その会社は本当になくなってしまいました。
ダイニングテーブルを製作していると、ご注文をしてくださったお客様が、どんな思いでお店に訪ねてきて、どんな生活をイメージして、長い製作期間を待ってくださり、お届けを楽しみにしているのか。
いつも、色々と想像を巡らせ、ふとそんな思い出もよみがえったりします。
その想像に、少しでも近づけるように、そしてその想像を越えることができるように、ダイニングテーブルに限らず、できる限りの技術と頭を使って、製作しています。
それはものすごいプレッシャーです。どれだけ製作させていただいても、慣れることはありません。
ただ、自分を追い込んで集中することで、その覚悟が精度となることは確かです。
今までの様々な経験が糧にして、またゆっくりと一歩一歩進んでいきたいと思います。